花情曲 はなのこえ 著:皇なつき
皇なつき先生の絵を初めて見たのは、光栄(現:コーエー)の「爆笑三国志」の中の
イラストでした。 もう、すぐにファンになりましたね。
繊細でいて存在感があり、それでいて歴史物の絵としての格も備わっている。と、
エラソーに言うとこんな感じでしたね。
で、この絵を描いている人のコミックがあると知ったときはすぐに集めました。 
(確か当時は五冊目の「黄土の旗幟のもと」が出た頃でした、初めて買った単行本は
「北京伶人抄」でしたね。)

さて「花情曲」、この本の中で自分が一番好きな話はズバリ二話目の「胡蝶至春園」
です。
愛華の口癖(?)『小混蛋(おばかさん)』がいいですね。
対して『なあんだ・・・やたらからんできたくせに、もうついて来ないのか。』とちぐはぐな
感情に戸惑う如春クン。
あー、歴史ティストばりばりなのに少女マンガだなぁ・・・。 
クライマックス、愛華の領巾に書いたメッセージを待春姉に見られまいと、頬を赤らめて
体で隠すその姿には思わず、微笑ましさをおぼえてしまいますね。

ハッピーエンドの『花情曲』、切ない別れの『胡蝶至春園』、遠くお互いを想い合うことに
なった『虎嘯』、二人して来世での幸福を願い共に死した『蛇姫御殿』。 
うーん、総じて見るとこの本ってあらゆる結末の恋愛話をえがいてあるんですよねぇ。

・・・宮子はかなりの正統派ヒロインな感じはしますが、なんかどっか怖いと思うのは
自分だけですかね?



梁山伯と祝英台 著:皇なつき
「永遠の恋人たち」。このタイトルの映画を御存知でしょうか? 
『梁山伯と祝英台』はもともと中国に民間伝承的に伝わってきた、比較的古くから
知られている物語で、それを実写映像化したものが「永遠の恋人たち」であるのです。

『花木蘭』の文人版とでも言いましょうか、このお話。 
えー、お転婆なお嬢様・英台が親元を離れて、また間違いの起こらないように男装
までして遊学に行くも、義兄弟の契りを交わした兄・山伯に魅せられていく。
学問一筋で色恋沙汰には無頓着な兄に、男装しているためはっきりと想いを伝え
られないで鬱々としていると、相手は相手で義理の弟が気になって気になって
仕方ない、あぁ俺は一体どうしてしまったんだろう・・・と思い悩む。
そして、全てを知ることになり結婚を誓うも二人の前にはまた悲劇が・・・。
というそれはそれは切ないストーリーなのです。

この本のあとがきページに描かれている『陳圓圓』。これって陳円円ですよね?
明末の呉三桂の愛妾の。
このイラストかなり好きなんですけど、この人物が陳圓圓と気付くのには、結構な
時間を要したのでした。
あと、日本史モノの「蛇姫御殿」でデビューしたという皇先生ですが、この単行本内の
「修禅寺物語」「人喰い」以来は日本史の話は収録されてないですよねー。
もう、描かれてないんでしょうか?
最近は西洋モノや、現代のサスペンスものですしね。



黄土の旗幟のもと 著:皇なつき
「中国史上、二百数十年続いた明王朝。 李信は悩んでいた。
李自成の軍に加わり、圧政に苦しむ民衆を救うべく、明王朝を打破すべきか・・・、と。
しかし、彼にはそうすることのできない重大な理由があった!!  明朝・大河活劇!!」

以上は、本書の表紙の紹介文です。
そう、この作品は「大河活劇」なんです。
中国モノの第一人者と謳われる皇名月さんですが、意外と漫画では戦史物はこの作品
のみです。(コミック版・始皇帝暗殺は扱いに困るところではあるんですが・・・)
皇さんは、その作品の多くは古代・近代中国を舞台にした
 @ファンタジックな恋愛物
 A割と普通の少女漫画的な恋愛物 
 Bクセのある主人公たちのヒューマンドラマ
の、いずれかに大別できると思います。(近頃は西洋物・ミステリー物なんかもアリ)

逆に考えると、中国の長い歴史の、多くの戦史の中でもこの「明末清初」はトクベツなの
でしょう。(私がこんなことを書くまでもなく、単行本中に皇さんも明言されてますけどね )
さて内容ですが、私はぶっちゃけてこの作品を読むまで、この「明末清初」という時代に
ついての知識はまったく持ち合わせていませんでした。
(強いて言うと、呉三桂と陳円円のエピソードくらいでしょうか。けっこう好きですよ。)
しかしそれでも、スッポリとこの作品を楽しめたように記憶しています。きっと無理が無く、
それでいて必要最低限に抑えられた時代背景の説明と、しっかりと作り上げられている
人物像のお陰であると思われますね。
ただ、残念なことに主人公である(多分)李信にあまり魅力を感じられなかった・・・。
(もっとも、そのお陰で良く話を楽しめたのかも知れないんですが)
その代わりといいましょうか、一・二度しか名前も出てこない、脇役(失礼)たちが気に
なってしょうがないんですけどね。
玉峰とか「俺に言わせりゃ、伯夷・叔斉は馬鹿だ」なんてニヒルな感じがカッコいい!

少々脱線しましたが、とにかくこの時代の知識が無い人でも(なんなら興味が無くても
OK)一度読んでみて下さい、ハマることうけあい!



李朝・暗行記 著:皇なつき
李朝時代(1392〜1910)の朝鮮には身分を隠して地方を巡り不正官吏の摘発や
民情の探索を事とする国王直属の官があったその名を暗行御史(アメンオサ)という

書頭の説明文の引用ですが、まあいわゆる「水戸黄門」みたいなものです。
本書ではその暗行御史のお話が三本、
そして漫画の題材としては珍しい科挙のお話が一本あります。

科挙を荘元(首席)でうかった尹寿驥(ユンスキ)は暗行御史として地方々々の
不正役人を裁いていた。
「かつての自分と同じ境遇のものがいると何とかして助けてやりたいと思う
だが彼らが幸福になるとふと妬ましくなるのだ
何故自分一人が絶ちきれぬ恨(ハン)の中にとり残されねばならぬのかと・・・」
官にあって官を憎む尹には、決して忘れられない過去がありました・・・。

「鴛鴦恨」
美しい妻を持つ地方の書記官の韓光洙(ハンクワンス)は科挙に合格するという
志を持ちながらも、管財の横領・領民からの搾取を常とする上官たちのもとで
苦悶の日々を送っていた。
そこに尹が現れて・・・。

「北辺の疾風」
金英山(キムヨンサン)は女真族との国境の村に住む若者で官にはないが村の
頭領たる人物。
女真族に婚約者・阿娘(アラン)を三年前に誘拐されてから、より一層女真族を
憎むようになっていたがある日、阿娘がひとりで帰ってきた。
その直後に阿娘の夫だという女真族の男・トルシェンが彼女を追ってやってきた。
阿娘は実は・・・。

「身世打令」
二年前、尹は科挙の試験を受けに上京するときひとつの村を通りがかった。
そこには妻と同じ名前を持つ結婚をひかえたひとりの少女がいた。
視察のためにその村に立ち寄ることになった尹。
果たして少女は幸せな結婚生活を送っているのだろうか・・・。
そして尹と妻との哀しい運命とは・・・。

「貢院の鬼」
科挙の郷試のために都にやってきた若者・陳書海はひとりの易者に呼びとめられる。
「あんたの後ろに恨めしそうな顔をした娘の幽霊がついている」と。
果たして陳の過去と、幽霊の正体とは?



燕京伶人抄 著:皇なつき
1920年代の燕京(北京)を舞台に、京劇役者・楊洛仙と彼に関わる人たちの物語。
「鳳凰乱舞」「愁雨歳月」「鏡花水月」「落花流水」の全四話が収められています。

「鳳凰乱舞」
馮家の少爺・如山は京劇好きで役者に憧れる少年。
一方でその兄・如海は祖父の意にしたがって如山に
「役者のような社会身分の低いものになど憧れるな」
と厳しく当たります。
しかし如山は、兄がかつて京劇の脚本家になるという夢を抱いていたことを忘れては
いませんでした。
正にここから「燕京伶人抄」は始まると言える話です。

作中で「7歩でなくては」と言っているこの人はもしかしてアノ・・・!!
・・・あ、個人的には蓮湘が可愛カッコ良くて好きです。


「愁雨歳月」
如海の妻・鳳霞は夫の心の中に自分の姿を見つけられないばかりか、その視線が
他の者に向いている事を感じていました。
京劇と、そして名優・楊洛仙とに。
『白素貞』の許仙を
「自分の妻も満足に愛してやれないどうしようもない奴」と評していた如海。
夫から愛される事を渇望している鳳霞。
封建時代の名残の残る夫婦のお話です。

でも鳳霞さんメチャ美人ですよね。


「鏡花水月」
楊洛仙に恋する少女・綉文。
しかし彼女は親に決められた婚約者との結婚が目前に迫っていました。
せめて最期に夢見る人に近付きたいと綉文は楊洛仙に近付きますが・・・。
時代がかってはいますが、少女マンガって感じのお話ですね。
私はこのお話結構好きです。
あと、綉文の友人・敏鴻。すっごい良いキャラです。(と思ったら続編でも出番が。)


「落花流水」
前三話ではあくまでも副主人公と言った感じだった楊洛仙が今回はメインになっている
お話です。
劇団に新しくやってきた新人の少年・少翠環。そして彼の師という男。
そこに何かを感じる楊洛仙。
人気も実力もあり、人柄はまるで君子の様だといわれる楊洛仙。
そんな彼の幼い修行時代の頃のお話が語られます。